- 2024.04.05
- 屋根塗装
塗装ができない屋根「パミール」とは|見分け方と適切なメンテナンス
通りかかった訪問業者に「お宅の屋根は“パミール”だから屋根を葺き替えた方がいいよ!」と言われたけど…
「パミールって何?」
「まだ築10年しか経ってないのになんで葺き替えなきゃいけないの?」
「塗装するのじゃダメなの?」
と不安になって調べているのではないでしょうか。
急に知らない人にご自宅の屋根を悪く言われたら、誰だっていやですよね。
ただ、もし訪問業者が言っている通り屋根が「パミール」なのであれば、塗装でのメンテナンスはできません。
なぜなら、パミールという屋根は通常のスレート屋根では起こらない表面のめくれなどの症状が起きてしまい、塗装をしても数年で剥がれてしまうからです。
しかし、そもそもパミールというものが分からないと本当にご自宅の屋根がパミールなのかも判断できないと思います。
そこでこの記事では、「パミール」とはどんな屋根なのか、具体的にどんな症状が起きるのかを写真で分かりやすくご説明していきます。
また、屋根がパミールだと分かったときのために、適切なリフォーム方法と費用負担を抑えるコツもご紹介します。実際のメンテナンスの際に必ず役立つのでぜひ目を通してみて下さい。
パミールの特徴や適切なリフォームを知って、大切なお家を長持ちさせていきましょう!
目次[非表示]
塗装NG!!ニチハのパミール屋根とは
『パミール』は、外装建材メーカー・ニチハが製造した屋根材の一つで、1996年から2008年まで生産されましたが、現在は製造が中止されています。
パミールが製造されたのは、屋根材へのアスベスト(石綿)使用が禁止され、各メーカーが「ノンアスベスト(無石綿)」のスレートを開発・販売していた時期です。
パミールもその時期の製品一つで、「ノンアスベスト切り替え直後の製品」です。
しかし、パミールを使用したお家で年数が経ってから、ひび割れや剥がれの不具合が多く報告されました。
同時期の他のノンアスベスト製品も不具合報告がありましたが、パミールが最も顕著でした。
屋根自体がパリパリと層状に剥がれています。
パミールの典型的な劣化症状です。
通常のスレート屋根であれば、10年前後で塗装をすることで耐久性を維持できますが、
パミールは塗っても屋根材ごと剥がれてしまうので、塗装する意味がありません。
本来であれば、耐久性などは販売する前にきちんと把握されるべきなのですが、検証が足りなかったのか、結局は実際に使って初めてこのような状況が発覚し、製造中止になりました。
メーカーの対応として、残念ながらリコール対応は行われておらず、不具合は経年劣化とされています。
パミールも劣化が進行していても、メーカーの対応は期待できません。
ご自身で屋根修理の業者を探してメンテナンスを検討する必要があります。
劣化症状で分かるパミールの判別
「うちの屋根はパミールなの?」と分からない方のために、見分けるポイントを紹介します。
パミールの一番の特徴は劣化症状です。
お家を建てた会社や近所の塗装・リフォーム会社に屋根の写真を撮影してもらって、状態をチェックしましょう。
※ご自身では屋根に上らないでください!大変危険です。必ず専門業者に見てもらいましょう。
層状剥離=ミルフィーユ状の剥離
ミルフィーユのように薄い層状にパリパリと剥がれていたら、パミールの可能性が高いです。
これはパミールの一番の特徴です。
屋根の先端部の劣化
屋根の先端がやや白っぽくなっています。
ミルフィーユ状の剥離が本格化する一歩手前の状態です(アップで見ると、層状に剥がれ始めているのが見えることがあります)。
釘の腐食による屋根欠落
この症状は、パミールの中でも一部の限られたお家でしか現れないものです。
ただ非常に危険なため、念のためお伝えします。
パミール屋根は稀に、屋根材のズレが発生し、そのまま落ちてくる可能性があります。
実はこれは、屋根を固定している「釘」の不具合です。
パミール販売当初に使った専用釘の中に、メッキ処理が薄いものが混入していたことが発覚しました。
この釘は腐食・錆びが起きやすく、屋根材のズレや落下の可能性があります。
これについては、2010年11月5日、メーカーのニチハから、正式に文書が出されています。
抜粋 “耐食性表面処理(ラスパート処理)のメッキ厚が薄い場合、正常にメッキ処理がなされた釘と比べ、経年に伴う腐食の進行が早まる可能性があり、屋根材のズレ・落下などが生じる可能性があります。” (出典:ニチハ株式会社) |
屋根のズレを発見したら、直ちに屋根修理工事をご検討ください。
屋根材は横幅91cmほどもあるセメント板ですので、万が一落ちてきたら大変危険です。
パミールのデザインで判別
劣化症状は屋根の向きやお家の日当たりなどの条件によって、まだ顕著ではない、分かりにくいことがあります。
そんな場合は、念のため屋根のデザインも見てみましょう。
スレート屋根はよく似たデザインのものも多数ありますが、パミールの特徴としては
・先端の凹凸が等間隔
・薄く縦のラインが入っている
というものがあります。
または、建築図面に使用した建材名が書いてある場合があります。
図面をお持ちの方はこちらもチェックしてみましょう。
適切なメンテナンスはカバー工法か葺き替え
パミール屋根は層状に剥がれるという特徴的な劣化症状のせいで、塗装をしても結局屋根自体が剥がれてしまい、メンテナンスの効果がありません。塗装するだけお金がムダになってしまいます。
そのため、お手入れは「カバー工法」か「葺き替え工事」を行います。
それぞれの特徴をご紹介します。
コスパが良くおすすめなのはカバー工法
カバー工法とは、既存の屋根の上に新たな屋根材をかぶせる工事です。
費用は、80~150万円ほどです。
(30坪、屋根面積80~100㎡とした場合の概算)
葺き替えと比べて手軽で、コストも低く済みます。
耐久性は使用する屋根材によって異なりますが、20~40年ほど持つものが一般的です。
ガルバリウム鋼板(金属)、アスファルトシングルなど種類やデザインが色々ありますので、業者と打ち合わせをして、ご自宅に合うものを提案してもらいましょう。
ただ、カバー工法は、雨漏りしているお家や屋根下地が傷んでいるお家には適しません。
その場合は、次に紹介する葺き替え工事を行ってください。
雨漏りしている・下地が劣化しているなら葺き替え
葺き替え工事は、既存の屋根を撤去して新しい屋根と交換する工事です。
屋根の下地板も補修・交換するので、雨漏りや下地の劣化が発生していた場合に有効な工事です。
費用は、100~200万円程です。
(30坪、屋根面積80~100㎡とした場合の概算)
カバーと比べて撤去処分の作業が増えるので、工期が少し増え、コストも高くなります。
ただ、問題が起こっている部分を取り去ることができるので、安心できます。
使用される屋根材はカバー工法と同じく、ガルバリウム鋼板やアルファルトシングルなどがありますので、葺き替えの場合もどんな屋根にするか業者と打ち合わせて見積もりを作ってもらいましょう。
無駄な費用負担を減らす3つのコツ
一般的なスレート屋根の塗装工事と比べると、カバー工法も葺き替え工事も高額で、困ってしまいますよね。
ここでは、少しでもお得にするためにできるポイントを3つお伝えします。
10年おきに何回か工事するはずだったものが、この1回で20年30年もたせられるという見方もできます。
今後のために無駄なくリフォームするために、ぜひお読みください。
屋根を詳しく点検してもらう
パミールのメンテナンスをするときは、必ず屋根を詳細に点検してもらいましょう。
なぜなら、どの工事方法にするかの判断が必要だからです。
例えば、カバー工法でよかったのに葺き替え工事となったら費用が数十万円も高くなってしまいます。
逆に、屋根の劣化がすすんでいたのにカバー工法をしてしまったら、数年後に不具合がでてまた修理が発生するかもしれません。
屋根の状態をきちんと把握して、カバー工法にすべきか葺き替え工事にすべきかを判断する必要があります。
業者に点検を依頼したら、直接のぼるか、性能の良いドローンや高所カメラで撮影してもらい、適切な工事方法を提案してもらいましょう。
※地上から屋根を見てもほどんど状態は分かりません。点検してくれない業者は避けましょう。
使う屋根材は複数の提案を貰って比べる
カバー工法や葺き替え工事の見積もりは、2~3パターン作ってもらいましょう。
屋根材の種類によって性能・金額・デザインもそれぞれ異なるからです。
例えば、ガルバリウム鋼板とアスファルトシングルは見た目がかなり違うので、どちらがお家に合うかカタログを見比べたり、
同じガルバリウム鋼板でも断熱材入り・断熱材なしで金額を比較したり、と検討することが様々あります。
見積もりを取るときは、「比較検討できるよう、いくつかパターンを作ってください」と依頼しましょう。
リフォームローンを利用する
パミールの屋根工事は突然の出費で、「まとまったお金がない……」と悩む方もいらっしゃると思います。
そんなときは、リフォームローンを利用することで負担を軽減できます。
高額な工事費用も分割支払いでき、月々の支払いは家計のやりくりもしやすくなります。
ローンの申し込み先としては、住宅ローンを取り扱う金融機関や銀行、または施工業者が提携しているクレジットローンなどがあります。
支払回数も30回、60回、120回など選べ、ご家庭の状況や将来計画に合わせて設定できます。
さらに、工事費用の一部だけをローンにすることも可能です。
例えば、130万円の屋根工事の場合、頭金50万円で残り80万円をローンで支払うこともできます。
これなら全額をローンにすることなく、安心して検討できます。
大切なのは、「まとまったお金ができるまで我慢しよう」とせず、早めにメンテナンスを行うことです。
パミールに気づくのは築10年前後が多いため、今はまだ大丈夫でも、1年2年放っておけば被害が大きくなってしまう可能性があります。
先送りにしたせいでもっと出費が増えるのは絶対に避けたいところですよね。
気づいた時点で早めにできるメンテナンスをおこなうために、ローン活用も視野に入れてください。
まとめ
パミールは、層状に剥がれるという劣化症状が特徴的な屋根です。
点検をしたうえで症状を見て判別します。
この劣化症状のせいで、塗装をしても意味がないのが問題となっています。
カバー工法か葺き替え工事を行いましょう。
大きな出費で困ってしまうかもしれませんが、
・屋根を詳しく点検してもらう
・複数の提案をもらって比べる
・ローンを活用する
などの方法で負担を軽減することができます。
重要なのは、メンテナンスを先送りしないことです。
今後のお家のためにも、早めにお手入れしてあげてくださいね。
最後までお読みいただきありがとうございました。